第4話

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たしかにそうだ。 野田さんにとって幽霊を見る事は日常茶飯事で、珍しくもないし驚く事でもない。 「幽霊はどうして人前に出てくるんですか?」 「それは正しい質問とは違うなぁ」 野田さんはそう言いながらインスタントのお味噌汁を作り始めた。 いつからそんなものを事務所に常備するようになったのだろうか。 「どう質問すればいいんですか?」 「まず、幽霊は人間と同じようにそこら中にいるから、『人前に出てくる』わけではない。単純に、そこにいるだけだ」 「悪さはしないってことですか?」 「悪霊じゃなければね」 野田さんはそう言い、ポットからお湯を注いてお味噌汁を作った。 いい香りがする。 「悪霊って真っ黒なモヤですよね? それなら昨日見た幽霊は悪霊ではないと思います。でも、ほっとける自信がないです」 あんな怖い顔をして見下ろされていたら、怖くてお風呂にも入れない。 「そうだなぁ……。マオリちゃんが見えた幽霊っていうのは、たぶんこのエアコンについてたヤツだと思うけどね」
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