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「でも、あたしあの幽霊に見覚えなんてありません」
「それが少し不思議な所なんだよなぁ」
野田さんはおみそ汁を飲みほしてそう言った。
「誰かに何か伝えたいのなら、本人の夢枕に出るのが一番手っ取り早い方法だ。それをしないということは……伝えたい人間がこれっぽっちも霊感を持っていないのかもしれないなぁ」
野田さんはそう言い、親指と人差し指で豆粒ほどの大きさを示して見せた。
「全く霊感がない人は夢枕も見れないんですか?」
「そうだなぁ。ただの夢だと思い込んで忘れてしまう事が多いみたいだな」
「だから幽霊はあたしのところへ来たんですね……」
そう言ってから、また疑問が頭をもたげて来た。
「どうして野田さんじゃなくて、あたしなんでしょうか?」
野田さんなら幽霊の望みを聞く事を仕事としている。
エアコンについて野田さんの所へやってきたのなら、野田さんに依頼をすればすむ話だ。
「俺じゃダメってことだな」
野田さんはスラッとそう言ってのけた。
「野田さんの外見が死神のようだから、幽霊もびっくりしたんですかねぇ?」
「マオリちゃん、それ本気で言ってる?」
「冗談ですよ。冗談。とにかく、幽霊は野田さんじゃなくてあたしに用事があるんだってことはわかりました」
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