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あたしと野田さんはシロについて整備されたお墓を抜け、森の中へと足を踏み入れた。
木々が生い茂った森はジメジメとしていて、気持ちが悪い。
こういう場所に来るとなんとなく嫌な予感がする。
しかしシロは躊躇することなく進んで行く。
「こんな森の中に犬を埋めたのか」
「シロです。そうです、当時は目印に石を置いてたんですけど、今は草や木に埋もれて見えなくなっているかもしれないです」
あたしは当時の事を思い出しながらそう言った。
昔はここももっと綺麗で、人が行き来して出来た小さな小道もあった。
でも、今ではその小道も見る影はなかった。
しばらく進んで行くとシロが途中で立ち止まり、振り向いた。
「そこになにかあるの?」
そう聞きながら向かうと、そこには草木に覆われた石が置いてあるのが見えた。
あたしがシロのお墓の目印として置いて帰ったものだ。
「ここ、シロのお墓です」
「そうか……」
野田さんはそう呟き、周囲を見回した。
辺りは薄暗く、なにもないように見える。
シロはそうしてあたしたちをここへ連れて来たんだろう?
そんな疑問が浮かんだ時、あたしの足に何かがぶつかった。
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