40人が本棚に入れています
本棚に追加
☆☆☆
シロはトラックの前を走っていた。
ずっと走っているのではなく、現れては消えて、現れては消えてを繰り返しながら進んでいく。
その内山をぬけて大きな通りへ出ると、小さなお寺が目に入った。
シロは迷う事なく、その鳥居をくぐって行く。
「このお寺に見覚えは?」
「ないです」
あたしは野田さんの質問にそう返事をした。
この山を越えてきたことは今まで一度もないかもしれない。
「とにかく、行ってみよう」
野田さんは3台ほどしか車を停めるスペースのない駐車場にトラックを停車させた。
車を下りると、シロが石段の途中で立ちどまり、早く来いというように待っているのが見えた。
細く長い石段を上から見上げると、漆黒の闇の中へと引きずり込まれそうな感覚になる。
「この上にはちゃんとお寺があるんですよね?」
あたしは思わず野田さんにそう聞いていた。
あまりにも不気味な石段なので、上ることを躊躇してしまう。
「あるだろう。たぶんな」
野田さんはそう言って肩をすくめると、あたしを追い越して歩き出したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!