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駐車場も入口も小さかったので建物も小さいだろうと思っていたのだが、そこには立派な建物が存在していた。
高い場所にあるので日当りもよく、汗がどっと噴き出して来る。
この場所になにがあるんだろう?
そう思ったとき、建物の奥から人が出て来た。
このお寺の人のようで、袈裟姿でニコニコとほほ笑むその顔はパッと見ただけでも癒される。
ここまで頑張って歩いて来た人をその笑顔で出迎えているようだ。
「おやおや、よく来ましたね」
その声は昔話なんかで聞かれるような優しげな声で、あたしは思わず微笑んでいた。
初めて会ったお坊さんなのに、なんだか懐かしい感じがする。
「あの……」
そう声をかけた時、お坊さんはしゃがみ込んでシロの頭を撫で始めたのだ。
「遠いのに何度も何度も足を運んでくださって、あなた方の事はこの子からよく聞いていますよ」
お坊さんはそう言い、シロを撫でながらあたしたちへと視線を向けた。
あたしはとまどい、野田さんを見る。
「俺は野田圭哉と言います。こっちは西岡マオリ」
そう言い、頭を下げるのであたしも慌ててお辞儀をした。
「野田さんの事はよく存じ上げております。マオリちゃんの事は、このシロから聞いています」
目尻にシワを寄せてほほ笑み、お坊さんはそう言った。
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