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☆☆☆
一旦事務所へ戻ってきたあたしたちは軽くご飯を食べて、ある人物が現れるのを待っていた。
事務所の中は涼しくて、あの嫌な臭いももうしない。
「野田さん、あの臭いは幽霊の臭いだったんですか?」
「あぁ。正しくは、霊が長年の思いをため込んだ臭いって感じだけどな」
野田さんは薄いコーヒーを一口飲んでそう言った。
「長年の臭い……」
「東能リナの場合は15年間思い続けていたことがあるんだろうなぁ」
野田さんの言葉にあたしは女性の顔を思い出していた。
目の前に幽霊が現れた時は驚いてその顔をしっかり観察することなんてできなかったけれど、今ならわかる。
似ているなって……。
そう考えた時、事務所のドアをノックする音が聞こえてきてあたしは顔を上げた。
「来た……」
あたしはそう呟き、立ち上がる。
でも、一体どんな顔をして出迎えたらいいのかがわからなくて、あたしは一瞬躊躇してしまった。
いつも学校で会っているのに、こういう場合になると途端に距離を感じてしまう。
あたしは大きく息を吸い込んで、そしてドアを開けた。
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