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脅かさないでよ。
と、心の中で文句を言う。
「マオリちゃん、君は友人に知られたくないのか?」
野田さんにそう言われ、あたしは「え?」と、首を傾げた。
「自分が今見ている物を素直に話せばいい。そして俺たちが調べてきたことも、全部素直に話せばいい」
その言葉にあたしは返事に詰まってしまった。
確かにそうだ。
麻葉をここへ呼んだのはそれを話すためなんだから、躊躇する必要なんてない。
でも……。
あたしには幽霊が見えるの。
麻葉のお母さんが見えるよ。
なんて言えば麻葉は怒って帰るんじゃないだろうかと、怖いのだ。
「……これの事でしょ?」
そんなあたしを見て麻葉がバッグから一枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。
その写真は随分と劣化しているが、麻葉と、麻葉の両親だと言う事がわかった。
「あたしが2歳の時に撮った写真。この後、お母さんは事故で亡くなったって、親戚からは聞いてる」
「麻葉……」
それを聞くだけですでにあたしの胸には痛みが走っていた。
でも、家族の写真があったら持ってきてほしいとお願いしたのは、あたしだった。
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