41人が本棚に入れています
本棚に追加
「……わかりません」
麻葉は小さな声でそう返事をしてうつむいた。
なにか、聞いてはいけない事のようだ。
「リナさんが事故死した後、君は父親と一緒に引っ越しをしたんじゃないのか?」
「たぶん……そうなんですけど、気が付けばあたしは今の親戚の家で育てられていて、父親の話はあまり聞かされてこなかったんです」
「それは妙な話だな……」
野田さんは腕組みをして、浮遊している東能リナさんへ視線を向けた。
「あ、あの、そこにお母さんがいるんですか!?」
「ん? あぁ、いるよ」
野田さんが頷くと、麻葉が空中へ視線を向けた。
見えない母親を探して目を凝らしている。
「君のお父さんについて、君自身は何も知らないのか?」
野田さんにそう質問されて、麻葉は空中から視線を戻した。
父親の話はあまりしたくないのか、顔色が悪い。
「麻葉、無理しなくていいよ?」
「ううん、大丈夫。あたしのために2人が色々と調べてくれたんだもん。あたしもいつまでも逃げてちゃダメなんだと思う」
麻葉そう言うと、スッと息を吸い込んで真っ直ぐに野田さんを見た。
最初のコメントを投稿しよう!