第1章

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野田さんはそう言い、ニヤリと笑った。 その不敵な笑顔にあたしの背筋は寒くなり、数歩後ずさりをした。 「過去のものならなんでも手に入れる。そしてそれを元々の場所に戻ることができる」 野田さんはゆっくりと話しながらジリジリと距離を縮めてくる。 あたしは野田さんとの距離を置きながら、背中に冷や汗が流れるのを感じた。 何か普通じゃない予感がする。 足を踏み入れてはならない場所に足を踏み入れてしまったような感じ。 お化け屋敷の中に1人で置き去りにされたような、底知れぬ恐怖が体中をまとっている。 「依頼人は彼女のご両親。だけど、ご両親はすでに亡くなっているんだよ」 野田さんのその言葉にあたしは甲高い悲鳴を上げ、首から下げていた防犯ブザーを派手に鳴らしたのだった……。
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