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☆☆☆
「お尻が痛くない!」
あたしは思わず歓声を上げていた。
今はタクシーの中で、あたしと麻葉が後部座席、野田さんは助手席に座っていた。
「さすがにトラックに3人乗ることはできないからなぁ」
野田さんは残念そうに言いながらも、快適な乗り心地に表情を緩めている。
「トラックってそんなに乗り心地が悪いの?」
「もう最低だよ。お尻がパックリ割れそうだもん」
あたしが大げさにそう言って見せると麻葉が声を上げて笑った。
さっきまでの不安そうな顔はどこかへ消えていて、あたしはホッと胸をなで下ろす。
「ねぇ、マオリは幽霊を見れるようになったんだよね?」
移動中にリサイクルショップでのバイトについて色々と聞かせてあげていたので、麻葉がそう聞いて来た。
「うん。全部が見えるワケじゃないけどね」
「ねぇ、あたしのお母さんってどんな感じ?」
そう聞かれて、あたしは麻葉の膝の上にいる東能リナさんを見た。
自分の娘から離れたくないからか、さっきからベッタリとくっついているのだ。
それでも麻葉にはその姿は見えていない。
「写真にあった通りだよ。麻葉によく似てる」
体は透けているし、蓄積された長年の思いから目は吊り上がっているけれど、あたしはそう返事をした。
変な事を言って呪われるのも嫌だ。
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