第1章

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「ターゲットは逃すし、もう本当に散々だ」 野田さんはそう言い、元々寝癖だらけの髪の毛をさらにクシュクシュにかき乱した。 「だからターゲットって、一体なんの事なんですか?」 あたしは野田さんの前の椅子に座ってそう聞いた。 何もかも中途半端な説明しか聞いていないため、その辺の事は少し気になる。 本当はこれ以上首を突っ込むことはよした方がいいとわかっているのだけれど、説明だけ聞いて帰ろうと思った。 それなのに……。 「口で説明してもきっとマオリちゃんは信用しない」 と来たのだ。 しかも、あたしを見下したような視線を送りながら。 あたしは野田さんの苦笑にも視線にもイライラしながら軽く舌打ちをした。 女子高生らしかぬ態度だということはわかっているけれど、野田さんのようなイケメンでもなんでもない男に見下されたら腹が立つ。 「あたしが信用しないって、どうして言い切ることができるんですか」 「そのブザーを使う時点で俺の事を信用してないからだよ」 野田さんはそう言い、防犯ブザーを指さした。
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