第1章

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「あははっ!」 思わず声に出して笑い、周囲の人が不思議そうに振り返る。 それでもあたしの笑みは止まらなかった。 リサイクルショップの商品はゴミ捨て場から拾ってきたもの。 店長の野田さんはやせ過ぎで不審者みたい。 それらを思い出すと楽しくて仕方がなかった。 平凡な日常が、あの場所にいるだけでガラリと色を変える。 そんな感じだ。 ひとしきり笑った後、あたしは給料とハタキを握りしめて歩き出した。 あたしは知らず知らず退屈を感じていたのかもしれない。 日常の中に変化を見つけたいと思っていたのかもしれない。 心は軽くなり、気分が上昇していくのがわかる。 家に帰るとあたしを心配していたお母さんがすぐに出迎えてくれた。 あたしは今日バイトが決まった事と、行くかどうか悩んでいる事を伝えた。 今日起きた出来事は……言わなかった。 言えばきっと心配してバイトを辞めるように言われるだろうから。 自室でそんな事を考えて、ふと思った。 あたし、あのお店で働きたいんだ……。
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