第1章

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すると野田さんはとても嬉しそうにほほ笑み「昨日拾ってきた商品なんだ!」と、自信満々にゴミの山を指さしたのだ。 ……だと思ってた。 予想通りの答えにあたしは特別驚く事もなく、「あぁ、そうですか」と、頷いた。 今日はこの大金を返しに来ただけだから、深く突っ込む事もやめておこう。 「野田さん、昨日のこれなんですけど……」 そう言ってバッグの中からお金を取り出そうとしたその瞬間、あたしは野田さんに腕を掴まれ、勢いよく引っ張られていた。 言葉は途中で途切れ、行きたいと願ってもいない方向へ強制的に足が進む。 野田さんは従業員スペースのドアを開けるとあたしをそこへ引き込んだ。 「ちょっと、なんなんですか!?」 これにはさすがに慌ててあたしは野田さんにそう聞いた。 昨日のように防犯ブザーを持っていないし、店にはあたしと野田さんの2人しかいない。 しかも従業員スペースには窓さえついていないのだ。 ここでおかしな過ちが起こっても助けは来ない。 あたしは野田さんの腕を振りほどこうと試みたが、見た目とは違い意外と力が強いらしく、振りほどく事もできない。 「さっそく仕事だ。行こう」 野田さんはそう言い、昨日と同じロッカーから車の鍵と財布を取り出すと外へ出た。
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