第1章

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外には昨日と同じようにボロイトラックが一台止まっている。 「仕事ってなんですか!?」 あたしは野田さんに必死に抵抗しながらそう聞いた。 「昨日の女性、金崎仁美の尾行を続ける」 そう言う野田さんにあたしは目を丸くした。 「なんなんですか? もしかして本職は探偵さんとか言っちゃいますか? っていうか、野田さんが尾行なんてしてたらそれこそ警察に通報されますよ!?」 まくしたてるようにそう言うと、野田さんはうんうん、と何度も頷いた。 「俺1人だと警察に通報される。だからこそマオリちゃんと雇ったんだ」 その言葉にあたしは一瞬動きを止めた。 「カモフラージュのため……?」 「そういう事だ。ちなみに探偵ではない。幽霊から依頼を受けて動いているんだと、昨日説明しただろ」 野田さんは呆れたようにそう言った。 いやいや、幽霊から依頼を受けると言うのが全く意味がわからない。 それよりなにより、またこのトラックに乗らなければいけないのが嫌で嫌でたまらない。 「マルタイは今日もあのデパートに現れると、亡くなったご両親から伺っている。ほら、行くぞ」 マルタイとか、完全に探偵用語を使ってるじゃない。 そんな事を思っている内に強制的にトラックに乗せられたあたしは、結局野田さんに付き合って昨日のデパートへと向かう事になったのだった。
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