第1章

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一体どこへ? そう思った瞬間、突然野田さんが立ち止まったのであたしは慌てて急ブレーキをかけた。 「よし。間に合った」 そう言い、野田さんは食品売り場に出ている100円の卵をワンパック手に取った。 「あ、これ1人ワンパックまでか。それならマオリちゃんもレジに並んで買ってくれ。これ、お金な」 野田さんはあたしの手に卵をワンパック乗せ、もう片方の手に百円玉を握らせた。 「へ……?」 あたしはキョトンとして野田さんを見る。 野田さんは少し走ったせいで額に汗を滲ませている。 しかし、とても満足そうな笑顔を浮かべている。 「これで一週間は卵に困らないぞ」 そう言い、鼻歌を歌いながらレジへと向かう。 その姿は主婦以外の何物でもなかった。 「の、野田さん?」 「ん、なんだい?」 「マルタイが現れたんじゃないんですか?」 「マルタイ? 誰がそんな事言った?」 今度はキョトンとした表情であたしを見てくる野田さん。
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