第1章

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自信満々にそう言う野田さんに、あたしは古い家で骨董品をあさっている姿を想像した。 それは完全に泥棒の姿であたしは不審な目を野田さんに向けた。 「ちなみに俺は泥棒じゃないから」 思っていたことを当てられて、あたしは思わず吹き出した。 「まぁ、幽霊を信じていないマオリちゃんに信じろと言っても難しいけどね。仕事をしている内にわかって来るよ」 「はぁ……そうですか」 あたしは頷いた。 幽霊を理解していくと言うのは嬉しいような嬉しくないような、とても複雑な気分だ。 っていうか、仕事するって決めてないから!! 今日野田さんに会った本来の目的を思い出したあたしは、慌ててバッグを開けた。 「野田さん、やっぱりあたし……」 『こんなバイトも、こんな大金も受け取れません』 そう言おうとした瞬間、視界の端に昨日の女性の姿が見えてあたしは言葉を切った。 女性は白いワンピース姿で、高いヒールをはいている。 パッと見ただけでそれらが高級品であることが理解できた。 「来た」 野田さんが緊張した口調でそう言い、あたしはゴクリと唾を呑んでバッグを閉じた。 野田さんの言っている事を鵜呑みにしているわけではない。 ただ幽霊とか、そういう現実から離れた世界に少しだけ興味を持っただけだ。 昨日と同じ、飽きて来た日常生活の中で野田さんに出会い、少しだけ面白いかもって思っただけ。
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