第1章

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すると男性は見る見るうちに笑顔になって行き、あたしの前までずんずんと足を進めると突然手を握ってきた。 男性のゴツゴツとした骨ぼったい手に一瞬身をすくめるあたし。 「君を採用しよう」 その言葉にあたしはポカンと口をあけて男性を見つめた。 「あ、あの採用って?」 「言葉の通りだ。君はバイトを探しているんだろう?」 「そ、それはそうですけど……」 グイグイ迫って来る男性にあたしは後ずさりをした。 バイトをするのは初めての事だけれど、面接もなく名前も知らないのに即決で決められる事ではないということくらい、あたしでも知っていた。 もしかしてこの人、なにかヤバイ関係者なんじゃないの!? 咄嗟にそう思い、男性の手を振り払った。 こんなに小さなお店なのに商品管理もなにもできていないし、やっぱり変! 「や、やっぱりやめます!」 あたしはそう言い、入ってきたドアに手を伸ばす。 すると後ろから「学生の時給は1200円だよ」と、声がしてあたしは動きを止めた。 「1200円?」 聞きながら、振り返る。
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