第1章

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しかし予想通りどんどん引き離されて行くオンボロトラック。 後ろから来た車に次々追い越されて行き、ついに彼女の乗った車は視界から消えてしまった。 「あ~あ……見失っちゃいましたね」 「そうだなぁ」 野田さんはため息をついてそう答え、トラックを路肩へ停車した。 少し乗っただけでもひどい揺れのせいでおしりが痛い。 あたしが体勢を立て直そうとした時、野田さんがハンドルの下部分についてい赤いスイッチを押した。 「あ、それなんのスイッチなんですか? 普通ハンドルにそんなスイッチついてないですよね?」 気になっていたボタンを押してくれたのでついでにそう質問してみた次の瞬間、車が音もなく動き始めたのだ。 しかもスムーズに、赤いスポーツカーよりも早く。 次々と車を追いこしていくトラックにあたしは唖然として言葉もでない。 「野田さん……このトラックは一体何者なんですか?」 ようやくそう質問すると、野田さんは自信満々に答えた。 「以前の依頼者に貰った可動式トラックだ。用途に応じてスポーツカーを上回るスピードを出せるし、像が乗ってきても壊れない構造になっている」 あたしは瞬きを繰り返して野田さんの説明を聞いた。 「ただ1つ、欠点があるのは……」 そう言った時、目の前を走っていたスポーツカーがマンションの駐車場へ入るのが見えた。 ここが女性の住んでいる場所みたいだ。
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