第1章

47/70
前へ
/250ページ
次へ
☆☆☆ 従業員室で野田さんが彼女のゴミをお店へと持ち帰り、段ボールに丁寧に入れ直しているのをあたしはぼんやりと見ていた。 野田さんは本当にこれを彼女に返すつもりだろうか? 一旦捨てたものを返されるなんて、とんでもなく迷惑な話だ。 きっと彼女は激怒するだろう。 「野田さん、聞いていいですか?」 「あぁ、なんだ?」 「野田さんには幽霊が見えるんですか?」 「あぁ。そうだね」 すんなりと肯定されてしまったので恐怖心はなかった。 野田さんの見た目が死神みたいだからか、嘘をついているようにも思えなかった。 「幽霊が野田さんに仕事の依頼をしてきて、野田さんはそれを受けている。それが野田さんの本当の仕事ですか?」 「うん。まぁそんなところかな。この店の客はほとんどいないから、そっちで生計を立ててるよ」 ということは、それほど幽霊からの依頼が多いと言うことか。 あたしはなんだかファンタジーの世界に迷い込んでしまった気分になり、足元が浮いている感覚になる。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加