第1章

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しかし元が狭いお店なので大きな家具が威圧的に感じられる。 そこであたしはお店に入って真正面には何も置かず、左右に分けて大物を配置した。 これで視覚的な広さを演出できる。 一通りの作業が終わってホッと息をついた時には、外はオレンジ色に染まっていた。 「そろそろ帰らなきゃ」 一応女の子だし、門限は夜の8時だ。 自分の服についたホコリをはらい、従業員室へと戻る。 すると野田さんも丁度作業を終えたところだったのか、テーブルには段ボール3つが置かれていた。 「野田さん、あたしそろそろ帰ります」 「ん? あぁ。もうこんな時間か。って、店めっちゃ綺麗になってるじゃん! マオリちゃん天才!?」 ドアからお店を覗いた野田さんが目を見開く。 褒められて悪い気はしなくて、あたしは少し照れてしまった。 「ところでマオリちゃん、夜中って出勤できるかな?」 そう聞かれて、あたしは出口で伸ばしかけた手を止めた。 「夜中ですか?」 もちろん無理だ。 門限は夜8時。 夜中に抜け出すなんて事したら、バレたら怒られてしまう。
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