第1章

51/70
前へ
/250ページ
次へ
「幽霊の出やすい時間は夜中の2時。この荷物は明日の朝2時に届ける事にした」 野田さんの言葉にあたしは返事に詰まってしまった。 幽霊とか、そんなの全然信じていない。 でも、野田さんが嘘をついているようには見えない。 本当に夜中の2時にあの女性のマンションへ向かったとしたら、野田さんは不審者。 完全な変態。 きっと現行犯で捕まってしまうだろう。 そう考えると少しだけ心配になった。 あたしの日常に色を加えてくれた野田さん。 死神みたいな外見だけれど、ちょっとはいい所もあるかもしれない。 大きな目だけみればなかなかに愛らしいし。 「無理なら俺1人でも……」 そこまで言った野田さんの言葉を遮るように、「行きます!」と、言っていた。 それは自分でも驚く返事だった。 明日は学校があるし、夜中なんて起きられる保証はどこにもない。 いくら元気いっぱいで怖いもの知らずの10代でも、首を突っ込むべきではないとわかる。 でも、言ってしまった言葉はもとには戻らず、野田さんは嬉しそうにほほ笑んだ。 「マオリちゃんならそう言ってくれると思ったよ。明日の朝1時にお店に集合」 そう言うと、野田さんはクルッと体の向きをかえてお店へと入って行ったのだった。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加