第1章

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☆☆☆ 今日、人生初の大脱走を行います!! 家に帰ってからのあたしは、そう顔に書いてあるほど挙動不審だった。 ご飯を食べていてもテレビを見ていても動きは常にぎこちなくて、心臓は常に爆発寸前だった。 わかるわけがないのに、両親が野田さんとの会話を知っているように感じられて、いつその話題が出されるかとビクビクしていた。 しかし、何事もないまま夜になった。 11時になって部屋に戻ったあたしはベッドに横になったものの、目はばっちり開かれていた。 眠れるワケがない。 少し派手なクラスメートたちは夜にこっそり家を抜け出して遊んだりしているらしいけれど、あたしはそんなタイプじゃない。 抜け出したって遊ぶ相手はいないし、彼氏もいない。 抜け出す必要が全くない女子高生だった。 時計の短針が動くたび、その立場が変化しようとしているのを肌で感じられた。 カチッカチッと一秒を刻む音がやけに大きく聞こえてきて、それに合わせて心臓は高鳴る。 家から脱出する方法は、クラスメートたちから聞いたことがあった。 最初に自室に靴を用意しておくこと。 玄関から出ると音で気づかれるから、玄関からは出ないこと。 部屋の明かりはつけないこと。 部屋が1階なら窓から普通に出ればいい。 2階なら非常用のロープを使って外へ出る。
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