第1章

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そして窓をそっと開ける。 夜の風が入り込み、少しだけ肌寒さを感じた。 それは緊張と混ざり合い、ゾクゾクと体の芯を駆け上がって来る。 毛が逆立つような感覚を味わった後、あたしは大きく深呼吸をした。 窓のサンに足をかけ、グッと踏ん張る。 片足でサンの上に立ち、すぐ目の前にある電柱に手を伸ばした。 しかし、ギリギリの所で手は届かない。 やっぱり、飛ぶしかない。 ほんの少しの距離。 だけど、夜中家を抜け出したことのないあたしにとってはとても遠い距離だった。 ギュッと目を閉じた自分の体がフワリと浮き上がり、電柱を両手でしっかりと掴む。 昼間の熱を持ったままの電柱は少し熱かったが、その温度で自分が部屋から出たのだとわかった。 ゆっくりと目を開けると、あたしは電柱につかまりまるでコアラのような状態でいることがわかった。 この滑稽な姿を誰かに見られたら恥ずかしくて死んでしまう。 あたしはソロリソロリと下りて行き、どうにか地面に足を付ける事ができた。
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