第1章

55/70
前へ
/250ページ
次へ
ホッと胸をなで下ろす暇もなく、今度は足音を立てないようそっと庭から離れた。 いつ後ろから両親に声をかけられるかとビクビクし、大通りへ出た瞬間あたしは走りだした。 誰も追いかけてきていない事はわかっていたけれど、自分が悪い事をしてしまったという罪悪感から逃げたのだ。 走りながら、背中は大量の汗が流れていくのがわかった。 こんなに緊張する出来事は久しぶりで、罪悪感は増すばかりなのに、あたしはいつの間にか笑っていた。 野田さんなんかの為にあたしは一体何をしているんだろうか。 ここまでして野田さんに付き合う必要なんて全然ないし、幽霊だって信じてないのに、なんであたしはこんなに楽しいんだろう。 まるで背中に羽が生えたような気分だった。 今までの普通が覆されるのがこれほどまで心地いい事だなんて思ってもいなかった。 今なら、クラスメートたちが夜に家を抜け出す理由がほんの少しだけ理解できる気がしたのだった。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加