第1章

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昼間は冴えない黒のスーツ姿なのに、今はアロハシャツにハーフパンツというリゾート気分漫才の服になっている。 これから仕事に行くはずなのに、完全に遊びに行く衣装だ。 「これ? これは夜になってからの仕事着だよ」 自信満々にそう言い切った野田さん。 突っ込み所が多すぎてどこから突っ込むべきかわからない。 黙って視線を泳がせていると、野田さんがテーブルの上に置かれていた買い物袋をあたしの目の前に突き出してきた。 「なんですか、これ」 目の前に出されたので思わず受け取ってしまってから、そう訊ねた。 「それはマオリちゃんの夜の仕事着」 そう言われ、あたしは袋を開けた。 その瞬間思わず吹き出した。 出てきたのは真っ赤なドレスで、胸元にはキラキラ光るストーンが大量につけられている。 蛍光灯の下で見たら目が潰れてしまいそうなきらびやかさだ。 「こ、こんなのをあたしが着るんですか!?」 思わず声が裏返ってしまう。 「うん。さ、着替えて着替えて」
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