第1章

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野田さんはそう言い、あたしの背中を押してロッカーへと移動した。 ロッカーにはいつの間にかあたしの名前が書かれていて、いつの間にか着替え用のカーテンまで付けられていた。 あたしが家に帰ってからもここで色々と作業していたようだ。 それは感心するけれど、あたしはここでバイトをすると決めたわけじゃない。 今はちょっと好奇心に負けているだけなんだ。 そんな事を言っても野田さんは聞く耳を持たず、カーテンをシャッ!と閉めるとなんだか変な鼻歌を歌い始めてしまった。 仕方なくあたしは聞いたこともない鼻歌を聞きながら、真っ赤なドレスに着替えるハメになってしまった。 生まれて今まで一度も着たことのないような服に、思わずドキドキしてしまう。 胸元が大きくVの字に割れていて、そこから貧相な胸の谷間が覗いている。 ロッカーの扉に付いていた鏡で確認してみると、あまりにも似合わなくてショックを受けてしまった。 「あ、靴はロッカーの中のと履き替えて」 カーテンの向こうからそう言われ、あたしはロッカーの中を確認した。 すると下の方に白い箱が置かれているが見えて、中を見るとそれは真っ赤なパンプスだった。
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