第1章

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☆☆☆ それからあたしたちはおなじみのトラックに乗り込んで彼女のマンションへと向かった。 マンションを外から見上げるとほとんどの部屋の明かりが消えている。 「彼女の部屋、わかるんですか?」 「もちろん。ご両親から鍵も受け取っているよ」 そう言うと、野田さんはハーフパンツのポケットからマンションの鍵を取り出して見せた。 「その鍵、本当に大丈夫なんですか?」 「大丈夫って、なにが?」 「野田さんが彼女のストーカーをして勝手に合鍵を……」 「まだそんな事を言ってるのか」 あたしの言葉を遮って、野田さんは呆れたようにそう言った。 だって、そういう風にしか見えないんだもん。 「まぁいい。実際に目でみれば納得するさ。マオリちゃんは荷物を運ぶのを手伝ってくれ」 そう言うと、車を路肩に停車して荷台に乗っていた段ボールを下ろし始めた。 これは彼女が昼間捨てていたゴミだ。 でもその量は昼間よりも増えている気がしてあたしは首を傾げた。 「金崎さんは夜にもう一度ゴミを捨てに出たんだ。その時に俺が回収しておいた」 あたしの疑問をくんで野田さんはそう言った。 「野田さん、またここへ来ていたんですか?」 「もちろんだよ。相手の事をよく知ることは大切だからね」
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