第1章

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それってストーカー行為じゃないですよね? そう言いたかったけれど、あたしはグッと言葉を飲み込んだ。 野田さんはストーカーかそうじゃないかは、もうすぐわかることだ。 もし万が一ストーカーだったなら、あたしがその場で通報すればいい。 そう思い、荷物を荷台から下ろしていく。 段ボール6つ分になった荷物を2度に分けてマンションの中へと運んでいく。 彼女の部屋は5階の一番端の部屋で、ドアを開けるための鍵も暗証番号も野田さんが知っていたためそこに到着するまではなんの問題もなかった。 「さて、じゃぁ行こうか」 そう言い、野田さんはドアに手をかける。 「ちょ、ちょっと待ってください」 あたしは慌てて野田さんの手を掴んでそれを止めた。 「どうしたんだ?」 野田さんは不思議そうな表情であたしを見つめる。 「本当に無断で部屋に入るんですか?」 「無断じゃない。彼女の親に頼まれて入るんだ」 「それって、通用すると思ってます?」 「通用しなくても通用させる。さ、行こう」 そう言うと、野田さんはあたしの心配をよそに人様の部屋のドアを勝手に開けたのだった……。
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