第1章

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野田さんがそう言うと、薄暗い部屋の中に突如として白い光が現れたのだ。 そのまぶしさにあたしは目を細める。 部屋の中央辺りに現れた光の中には見知らぬ中年の男女が立っていて、優しい笑みを浮かべている。 咄嗟に、野田さんが散々言っていた幽霊と言う言葉が蘇ってきて、あたしは後ずさりをした。 「お母さん、お父さん!!」 金崎さんが驚いたように声をあげる。 やっぱり、幽霊だ!! 自分の背筋にゾクゾクと寒気が走るのを感じた。 こんなにハッキリクッキリと幽霊を見たのは生まれて初めてだ。 よく見ると、2人とも足元が透けていて向こう側の棚が見えている。 完全な幽霊だ!! 後ずさりをしたあたしはそのまま腰をぬかして座り込んでしまった。 しかし金崎さんからすればその幽霊はご両親なので、フラフラと引き寄せられるように近づいていく。
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