第二話

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あたしは野田さんの後ろにそっと近づいて、その手元の覗き見た。 真剣に何を見ているのかと思いきや、その手に握られていたのはとても綺麗な女性の写真だった。 「この人の事、好きなんですか?」 おう聞いてみると野田さんは「うひゃぁ!?」と変な声を上げて椅子から転げ落ちてしまった。 あたしが事務所に入ってきたことにも気が付いていなかったようだ。 「いきなり、ビックリするじゃないか!」 野田さんは怒りながら立ち上がり、スーツに付いたホコリを払った。 あたしが数日来なかっただけで、すでにホコリがたまってきている。 「ちゃんとノックして入りましたよ? 野田さんはすごく真剣な顔をして女性の写真を見ていたから気が付いていない様子でしたけど」 嫌味たっぷりにそう言うと、野田さんは少し頬を赤らめてせきばらいをした。 「その女性の事が好きなんですか? やめておいた方がいいですよ? だって野田さんと写真の女性とじゃ見た目が違いすぎて月のスッポン……」 全部を言い終わる前にあたしは野田さんに背中を押されて、事務所の外へと追い出されてしまっていた。 「ちょっと野田さん、まだ話は終わってない!……じゃなくて、今日はお給料を返しに来たんです!!」
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