第二話

9/41
前へ
/250ページ
次へ
親友からの全く嬉しくない褒め言葉を聞き流していると、同じグループの三矢麻葉(ミヤ アサハ)と根津秀悟(ネズ シュウゴ)が肩を並べて教室に入ってきた。 「おはよう、2人とも」 手を上げてそう言うと、「おはよう」と、2人とも笑顔で返して来る。 「なぁなぁ、俺たちちょっといい事考えたんだ」 秀悟がそう言いながらあたしたちの席へと駆けてくる。 秀悟はグループ内で一番のお調子者で、みんなを元気にさせてくれる存在だ。 スポーツ刈りでさっぱりとした頭をしているが、帰宅部というギャップもおもしろい。 「なに?」 あたしがそう聞くと、「今日の放課後、京馬を励ます会を開こうと思うんだ!」自信満々にそういう秀悟。 京馬とは仲よしグループの男子、和久田京馬(ワクタ キョウマ)のことだ。 京馬は秀悟と一緒にいつもバカをやってみんなを笑わせるような存在だったけれど、3か月前に付き合っていた庄司愛由(ショウジ アユ)が行方不明になってから、ふさぎがちになっている。 好きな人が突然いなくなって落ち込むのは当然だし、何か事件に巻き込まれているのではないかとの噂もあったので、あたしたちは京馬に直接その話をするような事はなかった。 一番傷ついて、一番心配しているのは、きっと京馬だから。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加