第二話

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――無理なら、いいんだ。 野田さんは思いのほかすんなりと引き下がった。 でも、あたしの中で夜抜け出した時の緊張とドキドキが蘇ってきて、体の芯から熱いものが込み上げてくる。 日常ではない、別の世界に行くようなあの感覚をもう一度味わいたいと思ってしまった。 「……仕方ないですねぇ。そんなに言うなら行ってあげてもいいですよ?」 ――は? 否、無理なら別に……。 「わかりました。野田さんにはあたしが必要なんですね? 今からだとえっと……10時くらいには到着します」 そう言うとあたしは野田さんの返事を待たずに電話を切った。 いつの間にかニヤニヤと笑っている自分がいて、あたしは自分の頬を叩いた。 これからバイトだというのににやけていては話にならない。 こんな時間に呼ばれると言うことは、『返す』方の仕事だ。 どんな理由があって、どんなものを誰に返しに行くのか。 考えただけでもワクワクしてしまう。 また幽霊を見なくてはいけなくなるかもしれない。 という部分を覗いては、あたしの好奇心がうずくのに十分なネタだった。
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