第二話

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ドアの向こうからは蛍光灯の明かりが漏れていて、笑い声が聞こえてくる。 あたしは玄関へとそっと足を踏み出した。 今は番組がまだ続いている。 CMに入ってトイレに出てきたりしたら、終わりだ。 音を立てる事も、もたもたしていることもできなくて、あたしの心臓はドクドクと早くなる。 罪悪感と緊張感で背中に汗が流れていった。 1度目のように窓からジャンプして電柱に飛び移るような事はしていないのに、それ以上のリスクがある。 あたしはいつものスニーカーを履き、そっと玄関のノブに手をかけた。 カチャッという小さな音にも心臓が大きく跳ね上がった。 お願い、今日だけは静かにしていて。 ドアに向かって心の中でそう願う。 その願いが通じたのか、いつもはギィギィとうるさいドアが今日はなんの音も立てずに開いたのだ。 あたしは驚くと同時に、小さく開いたスペースからスルリと家を抜け出した。 そして一心不乱に走り始める。 早く、早く。 後ろから追われている感覚を振り払うため、あたしは走った。 走りながら、また頬が緩んでいることにあたしは気が付かなかったのだった。
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