第二話

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深刻な表情を崩さないままそう言う野田さん。 「それじゃぁ『返す』相手が誰だか把握できないんじゃないですか?」 「大丈夫だ。依頼者から住んでいる場所はもう聞いているし、相手は一人暮らしだからな」 野田さんはそう言うと、テーブルの上に置いてあった紙袋をあたしに突き出してきた。 ちょっと待って、このパターンって……。 野田さんから袋を受け取って中身を確認してみると、そこにはオレンジ色の派手なチャイナドレスが入っていて、あたしは思わず吹き出した。 「野田さん、今日あたしはこれを着るんですか?」 「そうだね」 さっきまでの深刻な顔はどこへやら、野田さんはチャイナドレスを持ったあたしを嬉しそうに見ている。 この人、本当はただの変態なんじゃないの? 本気でそう思ってしまっても仕方がない事だ。 「でも野田さん今日はいつものスーツじゃないですか」 あたしはよれよれの黒スーツ姿の野田さんに突っ込みを入れた。 「ん? いや、俺もちゃんと着替えるよ」
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