第二話

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あたしはキョトンとしてその袋を見た。 サランラップでマンションのセキュリティを突破できるとでも言うのだろうか。 「家主の指紋がついたラップだ。これを指紋認証に当ててドアを開ける」 野田さんの言葉に今度はギョッとして目を見開いた。 どうやら本当に用意周到な様子だ。 ではどうして野田さんはこんなに深刻な顔をしているんだろう? 疑問を感じていた所で、あたしはふと思い出した。 「そう言えば、今日は何を返しに行くんですか? 金崎さんの時みたいな荷物はないみたいですけど?」 トラックに乗った時に荷台になんの荷物も乗っていなかった。 それがずっと気になっていたのだ。 何かを『返す』仕事なら、それが運ばれていないとおかしい。 野田さんはあたしの質問にビクッと身を縮めた。 何か、聞いてはいけない事を聞いてしまったのだろうか? でも、お手伝いするためにはある程度仕事内容を知っておきたい。 「野田さん、今回は誰に何を『返す』んですか?」
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