第二話

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それはこの前野田さんが事務所でジッと見つめていた写真の女性だったのだ。 「え、なんで野田君が?」 女性が混乱した声を出す。 「急に……会いたくなって」 野田さんの言葉にあたしは目を見開いた。 はぁ? 急に会いたくなったってどういう事!? 仕事だったんじゃないの!? そう言いたいが、この場に流れている雰囲気が言葉を飲みこませた。 ここは子供であるあたしがでしゃばる場面じゃない。 なんだか修羅場になる予感もするし。 「ひより! てめぇまた浮気か!!」 丸刈りの男性が女性に向かって怒鳴り散らす。 その声はエントランス中に響き渡り、あたしは思わず「ごめんなさい!」と、身を縮めて謝ってしまった。 「マオリちゃん、君が謝る必要はない」 野田さんの冷静な言葉に「あ、そっか」と、我に返った。 怒鳴られたのは部屋の中にいるあの女性だ。 ひよりさんという名前らしい。
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