序章

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 「じゃあまず競技の種類ね。フルーレ、エペ、サーブルってのがあるの」 雅はそう言いながらパンフレットを渡してくれた。 「今一番の注目株はフルーレね。何でもね、つい最近まで、団体で世界ランキング五位なんだって。でも兄貴はエペをやっているわ」 「えっ、どうして?」 「フルーレで攻撃出来るのは胴だけなのよ。でもエペは爪先からマスクまでだから楽しいんだそうよ」 「ふーん、そうなんだ」 「今選手が構えているでしょう? 彼処はピストと言う舞台なのね。昨日の夜、五人掛かりで仕上げたそうよ」 雅の言葉を受けて、私は体育館の中に設置してあるピストを数え始めていた。 「合計八面で三時間係ったそうよ」 「どんな競技も裏方が居なくては始まらないのね」 私は解りきった発言をしていた。  雅の解説によると、フェンシング用語はフランス語だそうだ。 だから返事はウィとノン。 審判はピストに立った二人に向かって『エドプレ』か『プレ』と声を描ける。『準備はいいか?』と聞いている訳だ。それに対して選手は『ウィ』又は『ノン』と答える。両方共に『ウィ』となったら試合開始になる訳だ。 ピストの幅はおおよそ二メートル以内。長さは十四メートルと決まっている。  「今、審判の『アレ』の後で『ラッサンブルー、サリュー』って聞こえたでしょう? 挨拶なんだけど、日本で言うことの『気をつけ礼』かな? その前に言った『アレ』は『位置に着いて』みたいなものね」 「へー。フェンシングって、ルールや決まり事が多いね。私、頭がパニクリそう。雅のお兄さんって凄いわ。あっ、違った。それを私に判りやすく説明してくれようとしている雅が凄いのだった」 私の発言に雅は気をよくしたみたいだった。
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