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1.プロローグ
ホテルのロビーを彼に引っ張られるようにして歩いています。
何人かの人達は私たちを見てひそひそと話をしている様な気が
して、気にしすぎかも知れないけど、私は少し俯き加減で彼に付いていきました。
「ねぇ 抜け出して来ちゃって大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、美咲と俺の二人位いなくなっても誰も気にしないよ」
彼は早足で歩くから私は付いていくのがやっとです。
「でも、望月君はまずいんじゃない?一応有名人、でしょ?」
「それ皮肉?まあ いいんだよ。大勢で飲むのは好きじゃないし」
「うん、私も」
「先輩に教えてもらった良い店があるんだ。そこへ行こう」
「お任せします・・・」
少しだけ、息を切らして返事をする私を見て彼は笑いながら頷きました。
タクシーを掴まえると私を押し込むように乗せて、後から彼が乗って来ます。
行先を告げた望月君と目が合って小さく笑い合ってから、まだ手を繋いだままだったことに気が付いて、なんとなく目を逸らして黙ってしまったけど、心では話し掛けていたんだよ。
もう離さないで。
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