あきつしまの龍王

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ここは、壇ノ浦。 水平線に夕陽が沈みかけている。 水面には、平氏の幟(のぼり)、指物(さしもの)、 たくさんの兵士が浮かび、 空も海の中も朱に染まっている。 いちめんの紅。 水面から、光がわずかにしか届かない、青い青い水底。 ゆらぐ黒髪がある。そのあいだからのぞく、 小さな口からぽこり、と泡がひとつ、ふたつ。 泡は水面へと、ゆらゆらとのぼってゆく。 その小さな口の持ち主、トキは、 びっくりしたようにその泡をみつめていた。 ――母上の言った通りだった。水を胸いっぱいに入れると、 最初は苦しいけれど、すぐに慣れて動けるようになりますよ、と――
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