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しばらく海の底を歩くように進んでいたが、
――あれ、泳ぎがらくになった――
と思い手を見ると、指のあいだに
うっすらと水かきができている。
肌もほんのり草色に変わってきていた。
トキは重い直衣(のうし)を脱ぎ、小袖も脱いで、
はだかになった。宝剣をくくり直し、また泳ぎだす。
――家来たちは、私のために海での死を選んだ。
海ならば、私は泳いでどこまでもどこまでもいけるから――
トキは、「安徳天皇ときひと」としては
数えで八年の生涯だった。
男の子として育てられたが、じつは女の子だった。
にんげんの世界では、跡継ぎは男の子だけだったからだ。
一族のために、男の子のふりをしていたのだ。
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