あきつしまの龍王

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母も祖母も龍族。 トキの母の「徳子」は、陸に残ることを選んだ。 地上に、龍宮を作るのだと、それが夢なのだと。 この国『あきつしま』を地上から守るのだと。 「だから、トキは『ほんとうの龍宮』へもどって、 この国を海の中から守るのですよ」 と。 来し方を思い出しつつ、泳いで泳いで、 まる一日ほど経ったと思った頃、 ようやく海面に登ってみた。 ちゃぷ、と顔を出すと、夜空には 三日月がぼんやりと光を放っている。 満月の時の月は八咫(やた)の鏡のようなのに、 とトキは思った。三種の神器のうち、 八咫の鏡と勾玉はどこかへ行ってしまった。 龍族にとって、鏡は月、勾玉は星。 宝剣こそが太陽が地上に届く光を模したもの。 うすみどりの肌にできはじめているやわらかなうろこが、 ほんのりとした月明かりにきらきらと光っている。 トキは、翡翠色の龍になったのだった。
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