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静かな、静かな海だった。
トキは龍となった体をくねらせて、
思うがままに時には速く、時にはゆったりと泳ぐ。
時々、海面すれすれをトビウオのように飛ぶ。
背中の宝剣がからからと音を立てた。
――尼ぜ……ばば様は、練習すれば、空も飛べるのだと言っていた――
いつしか、トキの近くに青龍、白龍の
二体の龍が寄り添い泳いでいた。
凪の海に、三体の龍のつくりだす波が
幾筋ものらせんを描く。
やがて、白龍が案内するように潜りはじめた。
トキも、一緒に深く深く潜ってゆく。
待ち受ける龍宮では、トヨタマ姫が手をたたいた。
「龍王さまがもどってきます。
さあ、祝いの席をととのえましょう」
そういうと、にっこりと微笑んだ。
すると、タイやヒラメ、そのほか
色とりどりの魚がぱっと四方に散った。
ほたて貝は水を吐きだして、
ぱくぱくと水中を飛んでいった。
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