1人が本棚に入れています
本棚に追加
トキの眼に、海の底の明るい街が見えてきた。
朱塗りの大きな鳥居を門として、
大通りがまっすぐ伸びている。
通りに面し、たくさんの建物が立ち並ぶ。
通りの並木は、梅と桃と桜が一緒に咲いている。
薄桃色の花びらが舞い、ところどころで小さな渦を巻く。
トキは再び、はだかの女の子の姿になって、
町の大通りにふわりと降り立った。
すると侍女の姿をした女たちが歓声をあげて取り囲み、
あっというまにトキを童姫の格好に仕立て上げた。
「龍王女さまー」
「お帰りなさい―」
出迎えた大小の龍、大勢の海人、薄衣をはおった女神、
天女、エビやカニ。みな、笑いさざめきにぎやかだ。
トヨタマ姫がすうっと近づいてきた。
「お帰りなさい。もう、みなさん先に着いておりますよ。
魂のかたちだとすぐに遠くへ行けますからね」
トヨタマ姫のうしろから、泡をまとった海人たちが
たくさんあらわれた。町人の格好をしているが、
壇ノ浦で命を落とした家来、兵士や侍女たちだった。
最初のコメントを投稿しよう!