0人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の戸を開けたら、そこには虎がいた。
想像以上の大きさに、僕は息をのんだ。
虎を間近に見るのは初めてだが、ここまで大きいものだろうか。
5、6メートルはあるのではないだろうか。
虎というよりも化け物に近い。
戸を開けたまま教室に入らずにいると、後ろから声を掛けられた。
「大きいだろー、この虎。色々と特別なんだよー」
そう言うと佐々木は僕の両肩を掴み、揺らした。教室からかなのか、この男からなのか、ひどい獣の匂いに僕は顔をしかめる。
佐々木とは先ほど会ったばかりなのだが、すでに馴れ馴れしい。が嫌な感じがしないのは、彼の雰囲気によるものだろう。
「さて、ここが今日から君が通うことになる、通称トラコース、の教室だ」
ボブ・マリーを彷彿とさせるドレッドヘアーを揺らしながら、彼は続ける。
「いやー、君も運が悪いよね。この命令は最悪の部類だよ」
言葉とは違い、楽しそうに話す。これでもこの教室の運営者なのだから驚きである。
「この命令を成し遂げられたものはこの10年誰もいない。」
そう話すと佐々木はまた僕の両肩を揺らした。やめてほしい。
「10年前はいたんですか?」
「いや、それ以前はこんな命令はなかったからねー。だから誰も成し遂げていないんだよ。難易度は最高で最悪だ」
佐々木は僕の顔を覗き込む。やめてほしい。
「最低で最高で最悪な女王の命令だから仕方ないよねー」
最初のコメントを投稿しよう!