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奏さんを見るとわたしから顔を背けた。
反らした視線の先。確か…
ゆっくりと自分を見て、思わず悲鳴を上げた。
下着が!胸が!背中がっ!
「騒ぐな。じっとしてろ」
「で、も」
「動くと見える」
僅かに力が入る奏さんの指先。
ドキン
胸が鳴ったその時、わたしの悲鳴を聞きつけておばけが現れた。
「どうし・・・」
おばけ役の目が丸くなる。口笛を吹いたお化けを睨むと奏さんが上着を脱いでわたしの肩に掛けてその好奇の目から隠した。
「ここを出るぞ、歩けるか」
足が震えて歩けない。歩こうとしたらそのまま膝が崩れて座り込みそうになって、奏さんに支えられ横抱きに抱え上げられた。
「ご、ごめんなさい」
「いい、掴まってろ」
奏さんに抱えられてシャツを握りしめ顔を伏せお化け屋敷を出た。
大事なものに触れるように上着で包んで歩いてくれた。
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