204人が本棚に入れています
本棚に追加
舞台から追いかけてくる樹と、樹を止める榊さんと仁さんの間に、あっという間に距離ができてく。
それでもわたしを抱えた人は振り向きもせず、人混みを掻き分け中庭を出て行くと階段をあがった。
いったいどこへ―――
「…奏さん?」
「暴れるな。落ちる」
奏さんが屋上のドアを開けると、秋の風が頬を撫でた。
屋上には誰の姿もない。
屋上の隅まで歩いてくると奏さんは荷物のように抱えてたわたしを乱暴に下ろして、横の壁にドンと手をついた。
「……たかがゲームでおまえのキスをくれてやるつもりだったのか?あんなに震えてても」
「…そ、う、さん」
「俺が連れ出さなかったら…おまえは、樹と」
壁に押し付けられた肩に力がはいる。
奏さんに連れ出されなかったら確実に樹にキスされていた。
あと数センチで………
最初のコメントを投稿しよう!