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「いつから?僕、全っ然気づかなかった。」
ウチに来るなり拓己くんに聞かれ、私は何のことかわからずに首を傾げた。
「花菜、椎名さんのことが好きなんだろう?」
いきなり直球を投げられて、唖然と立ち尽くした。
「え?全然!なんで?なんでそう思ったの?」
口元にシニカルな笑いすら浮かべて否定した。
「目、見ちゃったからさ。地震の後、椎名さんを見る花菜の目を見たらわかったよ。ずっと好きだったんだろ?僕には隠すなよ。」
優しく諭すように言われたら、ふと肩の力が抜けた。
「うん。ずっと好きだった。ごめん、黙ってて。」
拓己くんは彼女さんとのことを正直にいろいろ話してくれていた。
遠距離でお互いが不安になったり、疑ってしまったり。
そんな気持ちを正直に言って相談してくれていたのに、私は自分の恋を一切話していなかった。
今は好きな人はいない、なんて嘘をついていた。
「やっぱりそうなんだ。なんで隠してたの?」
「だって、相手はあの椎名さんだよ?
私のこと、思いっきりバカにしてる椎名さんに惚れるなんて、我ながら不毛すぎて恥ずかしかったの。」
私が俯くと、確かになと拓己くんに呟かれて、私はますますへこんでしまった。
「なんで椎名さん?もしかして花菜ってM?」
「そうだよね。そう思うよね。違うって言いたいけど、ちょっと自信ないかも。
怒鳴られても、椎名さんにならうれしいなんて思っちゃったりして。」
自分で言ってて恥ずかしくなる。
ああ、私、今、絶対真っ赤になってる。
「へえ?こんな花菜、初めて見た。かわいいじゃん。」
かわいいなんて言われ慣れていないから、ビックリしすぎて拓己くんを見ると、優しい目をしたイケメンがじっと見下ろしていた。
ううっ。こんなイケメンにかわいいなんて言われていいんでしょうか?
恋人のフリだって、もったいないって感じなのに畏れ多い。
「でも、なんで椎名さん?言っちゃなんだけど、もっといい男いっぱいいるよな?」
「まあ、確かに。」
そう、椎名さんは無愛想で口が悪いというだけではない。
背がちょっと低めで、モデル体型のみのりちゃんよりかろうじて高い程度。
太っているわけじゃないけど、スタイルがいいわけでもない。
大学時代まで野球をやっていたらしく、足腰がずんぐりしている。
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