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私だって、たまに椎名さんがヤキモチ焼いてくれないかななんて思ったりしたけど、いつも見事にスルーされた。
結局、私なんて椎名さんにとってはどうでもいい存在なんだ。
「まあ、きっと刷り込みなんだよ。」
「え?刷り込みって、ヒナが最初に見たものを親だと思うってアレ?」
「そう。花菜は入社して最初に手取り足取り教えてくれた椎名さんを世界の全てみたいに思っちゃったけど、目が覚めれば周りにはもっといい男がいるって気づくよ、きっと。」
世界のすべて。
「そうかも。」
「そうだよ。もっと周りに目を向けてみな?
隣の課の藤城さんなんていい男だと思うけど?顔はそこそこだけど、背は僕より高いぐらいだし、人当たり良くて話も面白いし。」
拓己くんはその後、私の作ったハンバーグを食べながら、社内の目ぼしいフリーの男性について一人一人語ってくれた。
でも、正直、私の頭の中は椎名さんでいっぱいで、他の男の人の情報なんて耳にも入らなかった。
本当に私には椎名さんが世界のすべてで。
椎名さんに褒められたら天にも昇る気持ちで、椎名さんにダメ出しされたら2~3日引きずるぐらい落ち込んで。
できれば一度でいいから、みのりちゃんに向けるみたいな、あんな笑顔を私にも向けてくれないかなぁなんて、叶わぬ夢を見たりしていた。
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