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昔の夢を見ていた
逃げるようにひたすら謝ることとすがることしかできなかった
そんな昔が嫌で忘れていたのに
「レイカー」
俺を呼ぶこの声の主のせいで・・・なんて心の中で愚痴ってみたり
俺を優しく撫でたりするから
きっと昔の俺が俺に訴えてるんだろうな
『また同じことになるよ』
って
信じるなんて出来ない
きっと久しぶりの暖かさと世界が変わったからどこか安心したんだな
それじゃダメなのに
もっと話したかった
もっと近づきたかった
もっと笑顔が見たかった
もっと撫でて欲しかった
もっと名前を読んで欲しかった
でもダメみたい
俺の心がそう悲鳴をあげてる
2回しか話してないのに生まれてしまったこの感情に蓋をしよう
全ては自分のために
「お前レイカーなのか?」
いつの間にかフードが取れていた、きっと会長が魔法で取ったんだろう
「そうだよ」
会長の膝の上にある頭を起こし、池を眺める
この景色と思い出を焼き付けるようにジィっと
「なぜ落ちこぼれなんて」
「・・・会長、このことは誰にも言わないで
俺はこの手を会長の血で濡らしたくはないから」
すっと腰に付けていた刀を抜き会長の首に持っていく
俺は本気だと言う事を分からせるため
「・・・わかった。約束しよう」
「・・・ではそろそろ会場に戻りましょうか」
刀を鞘に戻し、今あったことをなかったかのように振る舞う
会長は少し戸惑いを見せるが分かったと会場に戻っていく
その後はまた媚を売られ続けてパーティーが終わる頃にはクタクタになっていた
「それでは、仕事は終わりましたので帰らせていただきます」
会長を自室まで送り挨拶だけし、帰るはずだった
「レイカー・・・いやリンネ」
急に呼ばれた名前に胸を弾ませたが、それも一瞬の話
「もう、会えないか?」
「あなたみたいな方には私ではなくても会って下さる方はいくらでもございますでしょう」
「俺は、お前がいい」
そういうことを言わないで欲しい
そんな言葉でこっちがどれだけ踊らされているか分かってない
「そういうのは婚約者にでも言ってあげてください」
王族ともなればこの年には婚約者の1人や2人はいるだろうに
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