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「今のうちに言っとかなきゃもう言うチャンスがなくなると思ったら、言わずにいられなくなった。ただ、それだけだ」
私に何か言う隙を与えずに、一気に言葉を吐き出したイチにぃ。
もう震えも収まってる。
だけど私たちは抱き合ったまま、ここが吊り橋の上だということも忘れてしまいそうだった。
「俺は……菜津美にプロポーズするよ。もういい歳だし、早く結婚したい」
「え!結婚って!?もうそんなに進展して…」
「いや、まだまだこれからだ。お前らに先を越されるわけにはいかないから、早く決めないとな。そのためには……」
「まひろ!!」
遠くから、叫ぶように私を呼ぶ声が聞こえた。
………『まひろ』?
イチにぃはここにいるし、シュウにぃの声とは違う。
だけど、よく聞き慣れた、私の好きな声だ。
「フッ…あいつ、やっとかよ。待ちくたびれたぜ…なあ、まひろ?」
体を解放され、手を引かれて立ち上がる。
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